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Artist's commentary
定めに背いて
[Monologue]
誰かの足音が聞こえた気がして、思わず彼女の腕をつかんでカーテンの後ろに隠れた。
「どうしたのでありますか」
何が起こったのかわからない、という様子で彼女が問う。もしかしたら、わたしの想像以上に彼女は目がよくないのかもしれない。
「静かに」口元に手を置きながら、彼女の細い肩を抱いて向き直る。
初めてレンズを通さずに見る彼女の眼はとても澄んでいて、午後の光を反射して、どこまでも、輝いていた。
この目の中に、あの勇気が隠されていたのだろうか。不意に、飲み干したはずの思いがせりあがってきた気がした。
「久保田?」呼びかける声に我に返り、後ろめたい気持ちになる。あの時とは違う。
誓いたくて、彼女の瞳から目をそらしたくて、そっとその唇に口づける。
彼女は、はじめすこし驚いたようだったが、すぐに抱きしめてきた。
ああ、こんなところを誰かに見られたらどうなってしまうのだろう。
西隊長は困るだろうか。細見先輩はもしかすると怒るかもしれないな。
それでも。あと少しだけ、この熱を手放したくない。
伝統に背き、例え異端と呼ばれても、一緒なら、きっと迷わず進めるはずだから。
いつのまにか、足音はどこかに消えていた。
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