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Artist's commentary
夏の嵐
嵐は突然前ぶれもなくやってきました。
事の発端は隣の赤い星からの訪問者でした。
ささやかな善意で地球を訪れた異星の少女は、思いもかけず政治の思惑の渦中に巻き込まれ、
その身柄を拘束されてしまいました。紆余曲折の末、少女は自由の身となり、無事故郷に帰る
ことができたのですが…。
実は彼(か)の星には少女のような穏健派と別に過激な急進勢力があり、彼らは20世紀初頭の
地球への軍事侵攻作戦の失敗を挽回する機会をうかがっていたのです。
(その歴史的大事件について英国の著名作家が詳細な記録を残していることは皆さんもよくご存知のとおりです)。
数十年ぶりに政権の奪取に成功した彼らは、次第に同胞の少女がうけた仕打ちが明らかになるや、
それを奇貨としたのです。
彼らは激越な言葉でこの星の人々を煽動しました。
そうしてとうとう惑星全土がひとつの言葉に覆われてしまいました。「地球の野蛮人に正義の鉄槌を」。
愛国的熱狂に対して耐性のなかったこの星の人々は自制心を失ってしまいました。
少女は悲劇のヒロインにまつりあげられ、真実を語ろうとするその声もかき消されました。
そして…ある夏の日…