Artist's commentary
姉と一緒にホラー映画を見よう
「わっ、わっ、いやぁっ!!」さっきから姉さんがうるさい。というのも、居間のテレビでホラー映画を見ているからなのだが、僕としてはB級臭い映画の内容よりも姉のリアクションを眺めていた方がおもしろい。ドキドキビクビクわーわーきゃーきゃー実に賑やかだ。「うぅ……こわかった……」ぼけーっと姉を眺めているうちに、どうやら映画は終わったらしい。時計を見ると、既に日付が変わっていた。「んじゃ、僕そろそろ寝るわ。おやすみ」そう姉さんに告げて、ソファーから立ち上がろうとしたのだが、「ちょ、ちょっと待って!」姉さんに引き留められた。「なに?僕眠いんだけど」「あ、あのさ、…………映画怖かったよね?」「……。ああ、そうだね」ろくに見ていなかったので適当に返事をする。「そ、それでさ…………ひ、ひとりで寝られる?」なに言ってんだこの姉。「まさか姉さん、映画が怖くてひとりじゃ眠れないとか言うんじゃ……」「ち、ちがうしっ!お姉ちゃんは平気だけど!?あなたは大丈夫かなって!」図星かよ。「だから、その、……今日は特別にお姉ちゃんが一緒に寝てあげるっ」「あ、結構です」いい年して一緒に寝る姉弟とか、ホラー映画よりよっぽど怖いわ。「なっ、なんで!?え、遠慮することないんだよ?」姉さんが僕の腕にすがり付いてきた。大変うざい。「い、いい子だからお姉ちゃんと一緒に寝よ?ね?」さて、この困った姉はどうしたもんか……。 「兄さん、姉さん。まだ起きていたんですか」僕らの騒ぎ声が聞こえたのか、妹がやってきた。「……また、兄さんとイチャついてるんですか。見ていてイラッとくるのでやめてください」僕にひっ付いている姉さんをジト目で睨む。「あ、あっ、これは、その……弟がひとりじゃ怖くて寝れないって言うから!」言ってねえ。「……なるほど。姉さん、今日は私が一緒に寝てあげますので、兄さんを放してください」姉の妄言に惑わされず、正確に状況を把握していた。うちの妹マジおりこうさん。――こうして姉さんを妹に任せ、僕はやっと寝ることができた。もう姉さんにホラー映画を見せるのはやめよう……。 ――姉系妄想ショートストーリー、前回と同じキャラです。描いている途中、暴風雨の影響で停電し一回データが飛びました。こまめにセーブする習慣付けよう……。