Artist's commentary
「よぉチャンピオン」 「あ、あなたは……千里山の園城寺、さん?」
「せや」 「ええと、服伸びちゃうから、離しt」 「団体戦決勝進出おめでとさん」 「えっ!?……あ、はい。ありがとう、ございます、あの、服」 「何固なっとんねん、そんなビビらんでもえーやん。いきなりワンパンかましたりせぇへんから。タメなんやし敬語いらへんよ、せやけどさんは付けろな?」 「いえ、はい、うん。服、はもういいや……ところで体は平気?派手に崩れ落ちてたけど」 「演技やで」 「えっ」 「名演技やろ?」 「え」 「心配した煌がメンバーの応援放棄して見舞いに来る思っとったんやけど竜華とか泉とかがいつまでも病室におるからアウェイや思て入って来られへんかってん」 「ちょ、救急車だってただじゃないんだよ?」 「会場持ちやしかまへんやろ」 「ちょ」 「おい、今私のこと最低や思たやろ?」 「べ、別に」 「いや、私も自分で最低野郎やと思っとるから大丈夫や」 「え、そうだったの!!?」 「せやけど人に最低言われんのはムカつくんで、そこんとこよろしく頼むでホンマ。私も鬼ちゃうんで思うだけなら五体不満足で済ませといたるから」 「は、はい……えっ?」 「それにチャンピオンも部費で菓子食っとるんやろ?最低のクズ同士仲良うしようや」 「……私のは自腹だし」 「あぁ?」 「すっすみません!たまに部費で落としてます!ごめんなさいっ!」 「適当に言っただけなんやけどホンマやったんか。ひひ、これが全日本高校生の頂点に立つ女の本性か、ひひひ」 「……す、菫も顧問も許可出してるし、別にそこまで悪いことじゃない、から……あっ、菫っていうのは白糸台麻雀部の部長で私の恋人なんだけど、いつも凛々しくてかっこいいんだけど、なかなかに奥手で本当は私のこと好きなのに一向に告白してくる気配がなくて困ってr」 「どうでもいいわそんなん。それよりお前、ホンマにそう思うとるんか?」 「えっ?もちろん心から菫のことかっこいいと思ってるよ」 「そっちやなくて部費を私利私欲で使うてるってことやねんこのボケ」 「し、私利私欲ってほどじゃない」 「その金は本来部活の運営やらの為に使うもんやろ?せやのにお前自分の菓子代に使うとるやん」 「だ、だけど、普通の運動部とかでも使うし……」 「せやな」 「だ、だよね」 「せやけど、お前は度超えとるんちゃう?って話や」 「えっ!?」 「お前ら菓子代にどんだけ部費使っとるん?おおかた普通の部活中にもぎょーさん菓子食うとんねやろ?」 「う……け、けど、そんなに高いものじゃないし」 「おんどれの金ちゃうなら高い安い関係あらへんやろ?なめとんのかワレ、しばくぞコラ」 「ご、ごめんなさい!……で、でも園城寺さんも救急車の」 「あ?」 「何でもないですごめんなさい!……すみれぇこのひとこわい……ふぇ……いつもみたいに優しく抱きしめてほしいよ菫」 「こいつメンヘラか?おいおい、現実逃避されても困るでぇ?私正論しか言うてへんやろ?」 「……自分のこと棚に上げてるくせに」 「いや、私は後でちゃんと立て替えた部費代上乗せする主義なんで、実質±0なんで。お前はちゃうやろ?部費どころかむしろ学校の経費で落としとるんやろ?」 「そんなことしてないっ!」 「お?勇みよってどないしたん?」 「さっきから変な言いがかりばかりつけてきて、いい加減私だって怒る」 「ひひひ、けど事実やろ?ひひ」 「違う。経費は部の設備拡張以外には使ってないし、第一そんな権限生徒にはない」 「いや、経費の話はノリで言うただけや、そこマジに受け取られても困るわ」 「え、ごめん」 「何謝まっとんねんお前。せっかくいい感じやったのに」 「え……?」 「お前いっつも無表情やん」 「えっ」 「感情押さえつけて何かっこつけとんねんアホンダラ、調子乗んな。そういうのは私みたいなミラクル美少女がやってはじめて効果があるんやこのハゲ、分を弁えろや」 「園城寺さんには何も分からない」 「いやめっちゃ分かるで?」 「分かるわけない」 「いやホンマに分かんねんコレが。お前私の未来視知っとるやろ?」 「え……?うん、でもそれが何」 「実は病院行ってからテレビで大将戦の中継見とったんやけどな?」 「うん」 「うちの竜華おるやろ?アイツ本気モードになるとゾーン(笑)に入って相手の体温やら心拍数やらが分かるくらい知覚が鋭敏化するんやけど」 「う、うん」 「私自分で言うのも何やけど、普通に天才やから竜華のゾーン(笑)見て、私もゾーン(真)習得してもうたんや」 「う、うん?」 「このゾーン(真)は相手の心まで読み取ることが出来るんや」 「え!?そうなの!!?」 「せや。んで重要なんが、うちの未来視なんやけど、実はこれ対象の時間の遡及も可能やねん」 「ええ!?つ、つまり」 「うん、過去も未来も見えんねん」 「す、すごい……すごすぎる!」 「この私の未来視(真)とゾーン(真)を併用することで相手の深層心理を過去未来問わず覗くことが可能なんや。だからお前の心の内も全て分かんねん」 「私の鏡じゃそこまで見通せない……そっか、だから私が妹とか家庭のこととか菫の今日の下着とかで色々思い詰めてることが分かったんだ……園城寺さんすごいね」 「へーそうだったん?そら割とシビアな問題やね、他人が口挟むもんでもないやんなー。まぁ生きてりゃええことあるやろ?知らんけど」 「うん……ありがとう、園城寺さん」 「こいつ天然か。ツッコまれんヤツとは絡みづらいわ。やっぱ私には煌しかおらへん」 「え?花田さんがどうかしたの」 「あ、せや、お前に話しかけた理由を思い出したわ」 「私を元気づけてくれるのが目的じゃなかったの?」 「は?なんやそれ?何の得にもならへんやろ。ここまで全部ノリやん普通に」 「え」 「そんなんより、お前煌に話しかけられてシカトこいてたみたいやけど何様やねんお前、はっ倒すぞお前コラ」 「……この人怖いのか優しいのか分かんないよすみれぇ……」 「おいコラ質問に答えろや、バラすぞワレ」 「ご、ごめんなさい!あ、あれは私のキャラを謎めいた雰囲気って感じに演出するためのアレで、別に花田さんが嫌いとかそういうんじゃなくて……」 「ああ、演出か。ならしゃーない」 「だ、だよね?」 「なわけないやろボケカス。演出の為でも煌を無視したんや、それなりの覚悟できとるんやろ?」 「ど、どうしろって言うの」 「歯ァ食いしばれやコラ」 「ご、ごめんなさいっ!」 「何マジでビビっとんねんお前、私は淑女やから戦意のない女シバいたりせんわ。見損なってもらっちゃ困るわタコ助」 「……実は園城寺さん割と優しい……?」 「お前殺すぞ。私が優しくすんのは煌だけやねん」 「ご、ごめんなさい!と、ところで園城寺さんは花田さんのことが好きなの?」 「当たり前やろ」 「当たり前なんだ……でも何か清水谷さんとかなり仲良くない……?」 「そういうフリしてれば煌がやきもち焼くかもしれんからな」 「そ、そうだったんだ」 「普通分かるやろそんくらい。アホかお前?幼稚園からやり直してこいや。そんなだからいつまでたっても菫とかってのに告白もされへんし、恋愛感情一切持たれへんのや。雑魚ちゃう?」 「……顔面殴りとばしていい?」 「かかって来いよ、お前が死ぬ未来しか私には見えへんけどな」