Artist's commentary
もったいないおばけ
■T県某市には、マイナーなとある都市伝説が語られている。
──それは、「コンビニの廃棄用ゴミ庫には鍵を掛けてはいけない。」という物である。
なんでも、某市の数箇所のコンビニを発祥としている噂なのだが
深夜、ゴミ庫に鍵を掛けていると凄まじい怪力を持った何者かによって扉が破壊されてしまい
挙句、中身の廃棄弁当類がどこかへと持ち去られるのだという。
深夜バイトは気が付かないのかだって?
気が付いても無意味なんだって話で、客もまばらな深夜帯にぼうっとしている時に
突然店の裏手から金属製の扉が弾け飛ぶ轟音が響き、慌てて確認しに行くと、
ほんの十秒もしないうちに犯人の姿と廃棄弁当の入った袋は無くなっているらしい。
監視カメラを仕掛けても真っ先に潰されるわ、店員が見張っている間は来ないわで
どうやら相手は動物じゃないらしいって事で気味が悪いやら恐ろしいやらだそうで・・・
かと言って、薄いとは言え鉄のスライドドアをハリセン状にひしゃげさせる相手をそこいらのバイトがどうこう出来るワケもなく。
結局、2,3回扉を破壊されてからは鍵をかけず、物音がしても無視するのが一番って事になったとか。
んで、翌朝にはほとんど空になった廃棄弁当の空き箱がゴミ袋の中に入ってるんだとか
・・・ゴミを袋に入れていく辺り、知能のある【何か】が犯人なんだろうけどな。
──そして俺はその噂の出処の一つ、ミニ○トップの傍に住んでいるんだが
ふと、「暫く何事も無く弁当が漁られているという事は、犯人は油断しているのかもしれない」なんて考えに思い至り
丑三つ時もいいところの深夜二時半。特に用もないのに息を潜めて例の場所を物陰から見てみようってワケだ。
我ながらヒマ人である。
そんな事をつらつらと考えつつ、実際バカバカしいと思いながら例の場所へ行くと
そこには予想外の【モノ】が存在していたのだ。
「モグモグ まったく最近の人間っ・・・は、もきゅ、こんなに食べられるもの捨ててー
【こんびに】だか【みにすたっぷ】だか知らないけど ハムッ
─食べ物に対しての感謝ってもんが足りないのよ ったくもー」
「・・・おい、日ノ丸」
「なによ駄ウサギ、私は今食事中なの。
それと【日ノ丸】じゃなくて【冴:さへ】って呼びなさいって言ってるでしょーが」
「お前ェはホントいつまで経っても馴染まねェのな。ま、いいや
そんな事より後ろ見ろ、後ろ」
「なによー後ろがなんだって言うの・・・ょ」んぐっ
「…」「…」『…』
直後、アスファルトが炸裂する音、そして暴風と同時に【ソレ】の姿は掻き消えた。
どうやら凄まじい速度で移動できるらしい【ソレ】は、暗がりでよく見えなかったが
送電線が直下型地震でも食らったように大きく上下しているのを察するに、
一瞬で電柱の上まで跳躍してどこかへと去っていったようだった。
──まさか例の犯人が…その、なんだ、銀髪幼女だったとは意外すぎてビックリだわ
しかもコンクリを踏み抜く脚力と、仮面ラ○ダー並みのジャンプ力の
日本刀装備の喋るウサギ付き。
なんだこれ、出来の悪い漫画のキャラクターか何かか?
やっべ、なんかこの街で面白いことが起きてるんじゃないか?
そんな予感と期待に包まれた俺の思考は、思わぬ方向で中断させられた。
「うわっさっきの音…まさかと思ったら駐車場壊されてるじゃないか!
……! ──えぇと、そこのニヤニヤしてる人。一体何があったんだ?…まさか 」
どうしようこれ。
俺じゃないです、銀髪の幼女が超音速で弁当取りに来てますって真顔で言ったら警察じゃない方も呼ばれてしまうんじゃないか?
適当にでっち上げたら警察呼ばれて器物損壊でアウトじゃね?
あ、ヤバイ
詰んだ。
──とある暇人の最後──
■ホームレス系ゴミ漁り妖怪娘(看板娘)のお食事@残飯。
前回イラストのプレッシャーや微妙に滲んでたカリスマなんてなかったんや!
ただの も っ た い な い お ば け (餌付け可)やったんや!!
■ちなみに食事しなくても日光だけで活動は余裕でできます。
飢餓感は普通に有るので何も食べないとエライ事になりますが。
多分木の根っことかダンボールとかガチで齧ってますこの娘(・ω・)
ちなみにオラ○ジーナボトルの中身は公園の水やで工藤。
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