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Artist's commentary
蝙蝠の毒煙:フルーロ
王にとってその煙は懐かしいものであった。
煙は瓶につめられて眠っていた。
レンカクはそれを見つけ出し、王に差し出した。
王はその臭いを嗅ぐと、懐かしい気持ちを思い出した。そして頷いた。
その臭いはよからぬものを遠ざけるお守りの臭いだった。
王は蝙蝠のような煙を月者たちの周りにつかせて、守ってやろうとした。
月者たちは自分達が武器であることを知っていたので煙を煙たがった。
お守りの煙はかえって敵を遠ざけてしまうからだ。
王に言われて側に漂っていたのに煙たがられてうろたえた。
蝙蝠の羽根を持った煙はついにどうすれば良いかわからなくなり、もといた瓶に引き返した。
それからというものお守りの煙の臭いは傘の中心のあたりに留まっていた。
長い間濃縮されていたその煙の臭いのせいで傘の下の鳥たちの喉はすこしだけ痛んだ。