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Artist's commentary
SMMR-blmr-NG02
「注目し過ぎて島村さんが気兼ねしてしまわないようにしよう」
アイドルではなく、一生徒として体育祭を楽しんで欲しい
当人抜きで行われた全校集会にて満場一致で採択されたスローガンは
異様な体育祭を生み出した
卯月がレーンに入ると、ピタリと校庭が静まり返る
変だなあ
首をかしげる
ピストルの破裂音
怯んで出遅れながらもスタートラインから飛び出す
ふわふわの後ろ髪が舞う
華奢な上半身に釣り合わぬ豊かなお尻が左右に揺れる
危なげなストローク
ステージで華麗なステップを踏む脚も短距離走には不慣れなようだ
抜きつ抜かれつの最下位争いに、うっかり放送委員の実況に熱が入った
「キャーッ!卯月ちゃんあとちょっとだよ、がんばってー! ――っあ!」
淑女協定違反であった
スピーカーからプツンという切断音
実況席は空になった
歓声無しのまばらな拍手と帰還した卯月に友人たちは余所余所しい
「えへへ、負けちゃた~」 「お、お疲れさま…」
苦笑するも笑顔は返ってこない
いよいよ異常事態にであることに気付く卯月
普段、愚痴や弱音を吐けば、たちまち皆からの過剰なボディタッチにさらされ
溺れるくらいのエールと元気を貰えるのに…
周囲を見渡すも皆途端に目をそらす
胸が痛み不遇の時代の記憶が蘇る
盛り上がりを欠いたままプログラムは進み、騎馬戦で一人取り残された所で心の堰は決壊した
肩が震え、視界が歪み、嗚咽が勝手に溢れてくる
ひくっ、ひくっ
卯月の様子に気付いた生徒職員が今大会の失敗を悟るより早く、大音量の声援が校庭をつん裂いた
「うづきぃーーーっ!! 頑張れーーーっ!!」
淑女協定違反であった
連行されていく不法侵入スーツ男
その背中に向けて放たれる少し湿った満開スマイル
「島村卯月、頑張りますっ!!」