
Artist's commentary
後悔の行く先
前の、水面下の葛藤の(まにあわない…?)あたりからの分岐。
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「…ダメっ!」
弱気になっちゃだめ。間に合うってしんじろ、私…!
もともと私はあんまり我慢できないほうだけど。
それでもたいていの場合は致命的な失敗にはなってない。はず。…はずなのっ!
心は決まった。すぐにでも向かおうと思い、しかし一つの懸念を思い出し後ろを見る。
(…ごめんりえ、たぶん平気だとは思うけど…)
ここに数分でそんなに動いてないし、私の下腹部の具合はもうそれどころじゃないと訴え続けている。
この場を離れ、トイレへと急ぐ。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
(ん…ぅ、っ)
海から出て数歩、私はこの判断を後悔し始めていた。
断続的に襲う強烈な尿意の波。
いまにも出るぞと暴力的なまでに迫ってくる。
出口を押さえたくても手にはビーチボール…
(まず…、置きに、いかない…と…っ)
トイレの場所はわかっているけど(トイレ近い人の性、場所確認)。
その前に荷物を置いてある場所に向かうと明らかタイムロスになる。
そのまま持って行ってもいいけど、それじゃ押さえられない…
恥ずかしい仕草をすることを前提に考えているこの状況に頭が痛くなる。
(どう…しよう……っ)
少しづつ歩みを進めながらも、いっぱいいっぱいな頭では判断できずにいたその時。
じゅ…じゅぅ…
「…あ…あぁぁっ」
確かな感覚。恐れていた事態。
ふとももを流れ伝う温かさに声が出る。
(まだ…だめ…とまって…おねがい!)
開きかけた水門を閉じようと全力で意識を向ける。
しかし波は止まらず、断続的に噴出するおしっこ。
足を伝い、砂浜に点々とした痕跡を残していく。
それでもまだわずかに足を進めていた私の、意思は…
「あ、や…ぁ…だめ…なのにぃ…」
いつのまにかおとしてたビーチボールといっしょに、堕ちた。